2013年5月2日木曜日

貝毒の原因、皮肉にも水質改善という大阪湾

 大阪湾の二枚貝に貝毒が広がっている。

 今年は規模が大きいといい、アサリ以外にトリガイやアカガイ、淀川のシジミでも検出された。シーズン真っただ中の潮干狩り場は他産地のアサリを土産に渡 すなどして営業しているが、客足は今ひとつ。最盛期を迎えたトリガイやアカガイは休漁に追い込まれた。旬の楽しみに水を差す貝毒だが、その原因は、皮肉に も大阪湾の水質改善にあるらしい。

 ◆全部回収

 4月28日、大阪府貝塚市の二色の浜潮干狩り場。家族連れでにぎわったが、傍らには「貝の持出しは出来ません」の看板。せっかく取ったアサリは出口で回収され、九州産と交換された。

 母親、祖母と一緒に来た同府高槻市の男児(5)は「自分で取った大きな貝をお父さんにも見てもらいたかった」と残念そう。

 二色の浜観光協会によると、4~6月は例年3万人近い人出があるが、貝毒が出た年は2割近く減るという。府内には、ほかに有料潮干狩り場が二つあるが、 いずれも同じ状況で、協会の男性幹部(68)は「安心して遊べるのに、貝毒が出るとアサリは危険という風評が広がってしまう」と恨めしそうに話した。

 ◆漁自粛

 4月中旬には、高級すしネタのトリガイ、アカガイでも貝毒が検出された。この時期、トリガイは1個800~1000円の高値で取引されるが、泉佐野漁協では漁の自粛を決めた。

 今後3週連続で規制値を下回れば、自治体が「安全宣言」を出すが、過去には、80日近くかかった年もある。同漁協の大伍健一監事は「収入が半減する漁師もいる」と表情を曇らせる。

 シジミについても、府が漁協に出荷の自主規制を要請、流通はしていない。

 ◆プランクトン

 府立環境農林水産総合研究所水産技術センターによると、貝毒は、二枚貝が「ウズベンモウ藻類」という毒性がある植物プランクトンを摂取して発生する。魚や巻き貝に危険はない。

 大阪湾は富栄養化が進み、赤潮の原因となる「ケイ藻類」と呼ばれる植物プランクトンが多かったが、水質改善で減少。“ライバル関係”にあるウズベンモウ藻類が増えている。

 府内で貝毒が初めて確認されたのは2002年。その後、水質の改善に符合するように06、07、08、10、11年と相次いでいる。
最終更新:5月2日(木)8時30分
読売新聞