2013年4月20日土曜日

子どもの心ケア学ぶ 東北被災地から神戸視察


東日本大震災の被災地から、神戸市教育委員会への視察が相次いでいる。
 阪神大震災の際、子どもたちの心のケアを行った同市教委のノウハウを学ぶのが目的だ。東北の被災地では子どもたちの心の不調が見え始めているといい、市教委の担当者は「阪神大震災の経験が東北でも生きれば」と話している。
 東日本大震災以降、仙台市や岩手、福島両県の各教委が神戸市の取り組みを学びに訪れた。大災害に備える自治体の教委も研修に来ていて、2012年度は計約50件に上った。市教委の担当者が各地で講演する機会も増えているという。
 各自治体の関心は子どもの心のケアへの取り組みに向いている。阪神大震災では同級生や担任教諭という身近な存在を失い、悲しみや不安を抱える子どもも多く、1995年4月から「教育復興担当教員」を各小中学校に配置。2010年まで、延べ1107人が児童、生徒の心のケアに当たってきた。
 震災から2、3年後には非行や不登校といった問題行動を起こす子どもが急増した。1997年に心のケアが必要とされた小中学生は3408人と全体の約2・5%に上り、96年から24・5%も増えたという。震災後生まれでも家庭環境の影響で情緒不安定になるケースもあった。
 発生から2年が過ぎた東北の被災地でも、子どもらの問題行動が徐々に表れてきているという。
 今年3月に視察した宮城県石巻市教委の伊藤浩指導主事(53)はストレスに苦しむ子どもらへの対応などを聞いた。「子どもに寄り添うことの重要性を再確認できた。心のケアは時間がかかるが、丁寧に対応していきたい」と話した。
 かつて担当教員だった神戸市立住吉中の中溝茂雄校長は「神戸が培った経験を全国に伝えるのは私たちの使命。つらい思いをする子どもを一人でも減らしたい」と強調した。(藤基泰寛)
(2013年4月20日 読売新聞)