2013年4月22日月曜日

横浜高島屋の先進的な障害者雇用 自主性尊重が成長の鍵 法定雇用率、民間企業は2・0%

障害者の法定雇用率が4月から、民間企業で2・0%となった。先進的な取り組みで知られる横浜高島屋(横浜市西区)はすでに雇用率が2・26%に達し、これまでに企業や行政、大学、福祉の関係者、障害者の保護者ら2700人超の見学者も受け入れている。
 午前9時45分、朝礼で1日が始まる。知的障害者ら13人で構成される同店のワーキングチーム。リボン・箱といった小物類や書類の作成、在庫の補充など任される仕事は約150種。チラシの修正など緊急の仕事も舞い込んでくる。
 「自閉症の人は反復作業が得意な人が多い」。障害者の職場適応で支援を行うジョブコーチ(職場適応援助者)の資格を持つ大橋恵子さん(53)は、そう話す。
 同店では、チームの13人も含め計28人(男性17人、女性11人)の障害者が働く。しかし、チーム発足を決めた当初は「障害者の方をどう扱っていいか分からなかった」と、現在採用責任者を務める池田勝さん(44)は振り返る。就労支援センターに相談して紹介されたのが大橋さんだ。
大橋さんの指導の下、障害者2人で発足したチームは現在、知的障害者12人、身体障害者1人の計13人にまで拡大。障害の重さなどそれぞれの適性に応じて、仕事をテキパキとこなしていく。
 「障害者はゆっくりでも必ず成長する。ただ、目標を持つ習慣や、達成感を味わう機会が少ない」。こう指摘する大橋さんは、「自立を促すため、本人の意思をできるだけ尊重する」との信念から、さまざまな工夫を凝らしている。
 その一例がスケジュール管理だ。チームではスケジュールを自分で決める。職場のホワイトボードには各自の名前と業務内容の書き込まれたマグネットが張り付けてある。毎日帰宅前、マグネットを張り替えて翌日の自分の仕事を決める。入社6年目の内田雄二さん(23)は「目標を達成したことがうれしかった」と話す。
 大橋さんはさらに、「自分が誰かの役に立つと実感することが大切」と強調。新入社員の山内元太さん(18)は、高校3年のときに同店で研修した際、大橋さんに勧められ、東日本大震災の被災地の岩手、宮城両県でボランティアも経験した。山内さんは「被災者に会って、大変さがいろいろ分かった」という。
障害者の人材教育に力を入れる同店。池田さんはチームについて「良質な労働力。実力で社内での地位を上げてきている」と高く評価。今後も毎年、障害者を数人ずつ採用していく方針で、「これからはチームのリーダーになってもらう人材として、精神障害者の採用にも力を入れたい」と構想を語った。(小林佳恵)
 【用語解説】障害者雇用率制度
 「障害者雇用促進法」に基づき、企業などに一定以上の割合で障害者の雇用を義務づける制度。対象は身体障害者と知的障害者だが、精神障害者も雇用率算定時にカウントする。
 昭和51年の制度開始当初の法定雇用率は1・5%だったが、その後段階的に引き上げられてきた。今年4月には0・2ポイント引き上げられ、国・地方自治体が2・3%▽都道府県などの教育委員会が2・2%▽民間企業が2・0%-となった。対象となる企業の従業員数もこれまでの56人以上から50人以上に拡大された。
 200人以上の従業員を抱える企業が違反すると、採用しなければならない障害者1人につき毎月5万円を国に納付金として支払わなければならない。また、行政指導も受け、2年9カ月が経過しても改善されない場合は企業名が公表されることになる。
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