2013年4月28日日曜日

乳幼児被曝、測定器開発へ


東京大学と放射能計測器メーカー「キャンベラジャパン」(東京)などは26日、県庁で記者会見を開き、乳幼児専用の内部被曝(ひばく)線量を測るホールボディーカウンター(WBC)を共同で開発すると発表した。市販されているWBCは大人向けで、体の小さい乳幼児を測ると、誤差が大きくなることが課題だった。今年9月にも、ひらた中央病院(平田村)で検査を開始する考えだ。
 WBCは、体内から放出される放射線を検出器で感知し、内部被曝線量を計測する仕組み。立ったままや椅子に座った状態、寝た状態と、装置によって検査を受ける体勢が異なる。
 市販されているWBCはいずれも検出器の位置が大人用に設計され、対象は原則、身長80センチ以上(4歳以上)に限られている。それより小さな子供が受ける場合は踏み台などを使うが、測定誤差が通常よりも大きくなるという。乳幼児を持つ保護者から「正確に測ってほしい」という声が相次いで寄せられ、東大などが開発に乗り出した。
 乳幼児専用WBCは寝た状態のまま計測する方式で、新生児も測ることができるように設計する。小さな体格に合わせて検出器の数を増やし、精度を高める。計測中、1人で密閉された空間に数分間とどまる必要があるため、工業デザイナーの山中俊治・東大教授らが協力し、子供たちが不安にならずに受けられるようなデザインを考えるという。
 海外では過去に子供用WBCが作られたが、測定誤差が大きいため、普及していないという。早野龍五・東大教授は記者会見で、「子供たちの内部被曝をきちんと測れる体制が整うことで、住民の不安解消や県内への帰還につながれば」と語った。
 乳幼児専用WBCは完成後、公益財団法人「震災復興支援放射能対策研究所」(平田村)に納入される。同財団が検査を無料で受け付け、委託先のひらた中央病院が行う。
(2013年4月27日  読売新聞)