2013年4月20日土曜日

細胞のイオン動き 直接観察できる装置を開発…世界初


豊橋技科大・沢田教授

イオンイメージセンサーの操作の指示をする沢田教授(奥)
 豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)は17日、同大大学院工学研究科の沢田和明教授(49)が、これまで間接的にしか見ることができなかった細胞のイオンの動きを、直接観察できる「イオンイメージセンサー」の開発に世界で初めて成功したと発表した。
 生物の体内では、細胞の水分量調節に関わるナトリウム、カリウムイオンや呼吸の調節に関係する水素イオン濃度など、イオンの動きが生命維持や健康に欠かせない働きをしている。だが、こうした化学物質は目で見えず、これまでは蛍光物質で“標識”を付けるなど間接的にしか観察することができなかった。
 沢田教授の研究は、イオンが帯びている微弱な電気を窒化ケイ素膜という特殊な材質のセンサーを用いてとらえ、ビデオカメラの映像のように動画として可視化するもの。水の中に入れても正常に作動する集積回路の開発に最も苦労し、着手から実現まで13年かかったという。
 生きた細胞を装置に載せてイオンの動きを直接観察できるのが特色で、この技術を使い、同大学で新たな顕微鏡開発の研究が始まったほか、国立長寿医療研究センター(大府市)ではアルツハイマー病の超早期診断に向けた検査装置の開発を進めているという。
 研究成果はイオンイメージセンサーシステムとして一連の技術を包括した特許を取得。今年度の文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞した。沢田教授は「医療機器や新薬の開発など、幅広い分野に寄与できれば」と期待している。
(2013年4月18日 読売新聞)