東京電力福島第一原発事故に伴うホールボディーカウンター(WBC)による内部被ばく検査で、市町村間で受診格差が広がっている。住民の受診が2巡目を迎える市町村がある一方、検査まで依然、数年待ちの所も。県は県内の正確な受診実態を把握できておらず、広域的な調整による待機者の解消に向けた具体策を示せないのが現状だ。県民からは早急な対策を求める声が上がっている。
■検査待ち
WBCによる内部被ばく検査は、県以外に南相馬市や郡山市、いわき市など20市町村が独自に実施している。
県内で最初にWBC検査を開始した南相馬市は既に延べ約1万人以上が受診した。一時は9000人ほどいた待機者は今はゼロ。希望すれば早く受診できる。浪江町も昨年中に18歳以下の子ども約3700人を対象にした1巡目の検査はおおむね終了し、夏をめどに妊婦を含め、2巡目の案内を出す計画だ。
一方、人口の多い都市部では検査が追い付かないのが現状だ。全市民約32万人を対象としている郡山市は、受診者が約4万人と全体の1割程度。市は全市民の検査を終了するのに平成27年度までかかると見ている。いわき市は原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約6万4000人を優先的に実施しているが、検査を終えたのは約4万1000人で、約6割にとどまっている。成人を含めた検査終了時期は見通せていない。
田村市は市内東部の避難区域の住民を優先に検査し、現在は市内全域に対象を拡大している。ただ、最も遅い地域の住民は26年夏ごろまで待たなければならない。市内大越町の塾講師久住秀司さん(71)は「検査が進んでいる他の市町村のWBCを、待機者の多い地域の住民が使うことはできないか」と市に求めた。しかし、市からは「難しい」との回答だった。
車載型のWBCの価格は1台1億円程度。国、県からの補助金がなく、市町村が全額を負担している。県南地方の市町村の担当者は「住民の税金で購入した機器を他の市町村に貸し出した場合、地元住民の反発が予想される」と相互活用の難しさを口にする。
■報告届かず
県は当面の検査対象を原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約38万人とし、平成23年6月から避難区域や都市部を重点的に検査してきた。2月末までに約11万9000人の検査を終えた。
県は受診実態を把握するため、独自にWBCを導入した市町村に月1回、受診者の検査結果を報告するよう求めている。だが、一部の市町村から報告が届かず、どれだけの県民が検査を受けたのか正確に把握できていない。
多くの市町村は、WBCがある病院と協定を結び、検査を委託している。須賀川市の担当者は「協定を結んでいない市外の病院で受診した市民を追跡できず、県に正確な数を報告できない」と実情を明かす。
県は市町村や病院の報告を参考に「現時点で29万人程度が受診した」と推定するのが精いっぱいだ。
■台数に限り
市町村や病院は健康に不安を抱く住民からの要望に応える形で、独自にWBCを購入し、検査を進めた。県は市町村との連携不足から、各市町村の待機者解消に向けた有効な対策を打ち出せずにきた。県県民健康管理課の担当者は「市町村の検査状況を把握できないため、WBCを待機者の多い地域に優先的に配置できなかった」と認める。
県は今年度中にも、市町村と民間病院に詳細な情報提供を求め、検査結果を一元管理するデータベース化を進める。各地の待機情報を基に、県所有のWBCを優先的に配置するなど対策を進めたい考えだが、WBCの台数に限りがある中、どれだけ待機者の解消につながるかは不透明だ。
■背景
ホールボディーカウンターは、人体の内部に取り込まれた放射性物質が出す放射線の量を精密に計測し、全身の内部被ばくの程度を調べる装置。県は平成23年6月から県民の内部被ばく検査を進めている。子どもや妊婦らを優先させ、今年度からは比較的放射線量が低い会津地方の子どもや妊婦の検査を開始する。
■検査待ち
WBCによる内部被ばく検査は、県以外に南相馬市や郡山市、いわき市など20市町村が独自に実施している。
県内で最初にWBC検査を開始した南相馬市は既に延べ約1万人以上が受診した。一時は9000人ほどいた待機者は今はゼロ。希望すれば早く受診できる。浪江町も昨年中に18歳以下の子ども約3700人を対象にした1巡目の検査はおおむね終了し、夏をめどに妊婦を含め、2巡目の案内を出す計画だ。
一方、人口の多い都市部では検査が追い付かないのが現状だ。全市民約32万人を対象としている郡山市は、受診者が約4万人と全体の1割程度。市は全市民の検査を終了するのに平成27年度までかかると見ている。いわき市は原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約6万4000人を優先的に実施しているが、検査を終えたのは約4万1000人で、約6割にとどまっている。成人を含めた検査終了時期は見通せていない。
田村市は市内東部の避難区域の住民を優先に検査し、現在は市内全域に対象を拡大している。ただ、最も遅い地域の住民は26年夏ごろまで待たなければならない。市内大越町の塾講師久住秀司さん(71)は「検査が進んでいる他の市町村のWBCを、待機者の多い地域の住民が使うことはできないか」と市に求めた。しかし、市からは「難しい」との回答だった。
車載型のWBCの価格は1台1億円程度。国、県からの補助金がなく、市町村が全額を負担している。県南地方の市町村の担当者は「住民の税金で購入した機器を他の市町村に貸し出した場合、地元住民の反発が予想される」と相互活用の難しさを口にする。
■報告届かず
県は当面の検査対象を原発事故当時、18歳以下と妊婦の合わせて約38万人とし、平成23年6月から避難区域や都市部を重点的に検査してきた。2月末までに約11万9000人の検査を終えた。
県は受診実態を把握するため、独自にWBCを導入した市町村に月1回、受診者の検査結果を報告するよう求めている。だが、一部の市町村から報告が届かず、どれだけの県民が検査を受けたのか正確に把握できていない。
多くの市町村は、WBCがある病院と協定を結び、検査を委託している。須賀川市の担当者は「協定を結んでいない市外の病院で受診した市民を追跡できず、県に正確な数を報告できない」と実情を明かす。
県は市町村や病院の報告を参考に「現時点で29万人程度が受診した」と推定するのが精いっぱいだ。
■台数に限り
市町村や病院は健康に不安を抱く住民からの要望に応える形で、独自にWBCを購入し、検査を進めた。県は市町村との連携不足から、各市町村の待機者解消に向けた有効な対策を打ち出せずにきた。県県民健康管理課の担当者は「市町村の検査状況を把握できないため、WBCを待機者の多い地域に優先的に配置できなかった」と認める。
県は今年度中にも、市町村と民間病院に詳細な情報提供を求め、検査結果を一元管理するデータベース化を進める。各地の待機情報を基に、県所有のWBCを優先的に配置するなど対策を進めたい考えだが、WBCの台数に限りがある中、どれだけ待機者の解消につながるかは不透明だ。
■背景
ホールボディーカウンターは、人体の内部に取り込まれた放射性物質が出す放射線の量を精密に計測し、全身の内部被ばくの程度を調べる装置。県は平成23年6月から県民の内部被ばく検査を進めている。子どもや妊婦らを優先させ、今年度からは比較的放射線量が低い会津地方の子どもや妊婦の検査を開始する。
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