2013年4月19日金曜日

<福島・死刑判決>元裁判員がストレス障害 遺体画像で

強盗殺人罪などに問われた被告に死刑を言い渡した今年3月の福島地裁郡山支部の裁判員裁判で、裁判員を務めた福島県の60代女性が、証拠調べで見た遺体のカラー画像などが原因で不眠症や食欲不振に陥り、「急性ストレス障害(ASD)」と診断されたことが分かった。女性の弁護士によると、裁判員経験者が精神障害と診断されたのは初めてという。女性側は国に制度の見直しを求めるため、慰謝料など計160万円を求める国家賠償訴訟を仙台地裁に起こす構え。

 裁判員の心のケアを巡り、最高裁は昨年2月の有識者懇談会で、遺体の写真など刺激の強い証拠は白黒にしたり、コンピューターで加工した映像にしたりするなど、裁判員の衝撃を和らげる配慮をしていると説明。メンタルサポート体制も充実していると述べていたが、裁判員を務めたことによる「被害」が確認されたことで、12年から進められている裁判員法の見直し論議にも影響を与えそうだ。

 女性や家族によると、3月1日に同支部で裁判員選任手続きがあり、強盗殺人事件の担当と告げられた直後から不眠症に悩まされるようになった。

 証拠調べでは、被害者夫婦の遺体や傷口のカラー画像が目の前のモニターに映し出された。評議では、テーブルの真ん中に犯行に使われたとされた凶器のナイフが置かれ、被告の残忍性の説明を受けた。

 その結果、食事をしても嘔吐(おうと)を繰り返すようになり、判決後も、遺体の画像などがフラッシュバックし、悪夢にさいなまれた。量刑を巡る自らの決定にも悩み続けているという。

 そのため女性は、最高裁が開設している「裁判員メンタルヘルスサポート窓口」に連絡。しかし、交通費を自分で負担して東京に行かないと対面カウンセリングが受けられないと告げられ断念した。3月22日に心療内科で受診したところ、1カ月の休養を要するASDと診断され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)へ移行する恐れがあるとして薬物治療を受けることになった。

 女性や家族は「裁判員の心のケア制度はあるのかもしれないが、実際には役に立っていない。国賠訴訟を機に裁判員経験者全員に改めて聞き取りするなどして制度の見直しを図ってほしい」と訴えている。【三村泰揮、栗田慎一】