2013年4月11日木曜日

孤独死、仮設住宅で19人…福島


東京電力福島第一原発事故の影響で、仮設住宅などで避難生活を送る独り暮らしの人の孤独死が相次いでいる。
 福島県警の調べでは、今月5日現在で計19人が仮設住宅で死亡していた。県や自治体は孤独死を含む震災関連死の対策を強化しているが、仮設住宅などが避難元から離れた地域に分散して建てられ、家族や地域住民の目配りが十分にきかない本県特有の事情も背景にある。
 県警によると、19人の内訳は、30歳代1人、50歳代3人、60歳代8人、70歳代4人、80歳代2人、90歳代1人。いずれも独り暮らしの男女で、60歳超の高齢者が約8割を占めた。
 昨年8月に警戒区域が再編されたものの、現在も県内外に住民が避難する楢葉町は、昨年10月以降、計3人の孤独死を確認した。このうち郡山市の借り上げ住宅に避難していた独り暮らしの男性(58)は2月17日、ベッドに倒れているのを訪問した警察官と町職員が発見した。男性は病死で死後3日が経過していた。
 この男性は2日前、知人と一緒にバスで楢葉町の自宅に帰宅する予定だったが、待ち合わせ場所に現れず、連絡も取れないため、知人が町に連絡した。
 いわき市の仮設住宅でも、昨年10月13日に男性(70)が、1月16日に女性(82)が、それぞれ風呂場で死亡していた。いずれも病死で、死後数日が経過していた。会津若松市に町役場が移転した大熊町も2月下旬、同市一箕町の仮設住宅に避難中だった男性(60)の孤独死を確認した。やはり死後数日が経過した後だった。
 各自治体は孤独死を防ごうと様々な手を打っているが、完全に防ぐのは難しく、頭を悩ませている。
 大熊町は町社会福祉協議会などと協力し、約20人いる相談員を仮設住宅などに派遣。また、委託業者が携帯電話で毎日安否の確認をしてくれる緊急通報システムも無料で受け付けているが、1月末現在、利用者は52人にとどまっている。
 楢葉町は生活支援課職員が半年に1回、借り上げ住宅を見回ってきたが、今後は連絡をとる頻度を月に数回とする考え。ただ、「避難が長引き、24時間の確認まではできないので、限界もある」としている。
 阪神大震災や東日本大震災でボランティアを派遣し、被災者の見回りをしてきたNPO法人「レスキューストックヤード」(名古屋市)の栗田暢之・代表理事は「ボランティアに来る人も減っており、今後も孤独死は増えるだろう。健康な町民を巻き込み、丁寧に見回りをするしかない」と話している。
(2013年4月11日 読売新聞)