まだ食べられるのに捨てられる食品を集め、生活に困っている人たちへ配る「フードバンクちば」(千葉市稲毛
区)の活動の輪が広がっている。活動当初は月数人に食品を渡すだけだったが、現在は月30人前後に増えた。食品を寄付する個人や企業も増え、担当者は「貧
困に手を差し伸べる活動への理解が広がっている」と受け止めている。(白名正和)
レトルトカレーにサラダ油、クッキーやチョコレート菓子、缶詰に袋入りの米。千葉大学近くにある事務所は、約三十平方メートルの部屋の三分の一が
棚に占拠されている。寄贈された食品が整然と並び、ペットボトルのお茶や水は並べ切れずにあぶれ、段ボールのまま積まれている。
「もともと棚は置いてなかったんですけど、いただく食品が増えたので最近、設置したんです。そろそろ別の場所に倉庫をつくることも考えないと」。担当の菊地謙さん(44)が説明する。
フードバンクは、一九六〇年代にアメリカで始まったとされる運動。フードバンクちばは、労働者が仕事づくりのために出資し合ってつくる協同組合「ワーカーズコープちば」(船橋市)が、二〇一二年五月に設立した。
食べ物に困り、食品を希望する人は当初、弁護士や県の中核地域生活支援センターから紹介された月数人だった。今は、千葉市社会福祉協議会とも連携し、約三十人前後に渡している。
夫が肝炎で妻は視覚障害という六十代の夫婦、失業後に就職先を見つけたが給料日まで一カ月過ごさなければいけない「シングルマザー」。支援する相手は、公的資金の貸し付けや生活保護の支給が始まるのを待つ人が多い。活動開始から今年二月までに百九十人を支援したという。
食品を集めるため、一般家庭向けにキャンペーンを初めて実施したときは、十キロほどしか集まらなかった。今年一~二月の三回目のキャンペーンは、計八百五十キロも集まった。
活動が一年近くとなり、問題となっているのが活動資金の確保だ。フードバンクは、食品を寄付する側もされる側も金を払わない。運営は寄付やカン
パ、助成金や委託費が中心となる。事務所家賃や支援先への食品の発送、車のガソリン代などだけで、スタートから三月までに約三百万円かかった。
二〇一二年度は国の補助金を受けられたが、一三年度分は見通しが立っていない状況だ。「年度初めの数カ月分は、持ち出しになるだろう」と菊地さんは表情を曇らせる。倉庫の新設もメドすら立っていない。
活動をいかに自立させるかは、フードバンクを手掛ける全国の団体が共通して抱えている問題という。菊地さんは「例えば、会費制の支援会員制度をつくったり、CSR(企業の社会的責任)の一環として県内企業に協力を求めたり。手を尽くしていきたい」と強調した。
活動の問い合わせはフードバンクちば=電043(375)6804=へ。
東京新聞 2013年3月31日