2013年4月8日月曜日

黄砂飛来時にPM2・5上昇、有害物質も増加

微小粒子状物質「PM2・5」の大気中濃度が中国大陸から黄砂が飛来した際に上昇し、粒子表面に付着した有害物質も増加することが、久留米大医学部の石原陽子教授(公衆衛生学)らの研究で分かった。石原教授は「黄砂飛来時は健康へのリスクが高まる可能性がある」と指摘している。

 調査は2011年5月、同大で実施。同月1~5日に黄砂が飛来し、PM2・5(粒径2・5マイクロメートル以下)は1立方メートル当たり最大で65マイクログラムに達した。黄砂が飛来していない時と比べ、粒径1~7マイクロメートルの粒子と、さらに小さい30ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の粒子も増えた。

 成分分析結果では、大気汚染を裏付ける物質とされる硫酸イオンや硝酸イオン、アンモニウムイオンがPM2・5で、約3~5倍に増加。粒径10マイクロメートル以下の浮遊粒子状物質(PM10)では約5~7倍だった。

 石原教授によると、肺に取り込まれる粒径は7マイクロメートル以下。調査結果から黄砂飛来時は、より小さな粒子を吸い込んでいる可能性がある。同じ重量で測った場合、小さな粒子ほど数が多く、表面積が大きくなるため有害物質も付着しやすい。そのため肺の奥深くまで粒子が入り肺気腫や慢性気管支炎、さらに血液に流れると心疾患につながる恐れがあるという。

 石原教授らは07年から、黄砂が健康に及ぼす影響を調査。同一本人に飛来前の2月、飛来する5月、飛来後の7月の年3回、せき・たんの症状や生活状況などを尋ねている。11、12年の調査では黄砂飛来時に「たんがよくからむ」「喘鳴[ぜんめい]がよくある」との回答が多かった。

 中国や韓国、モンゴルの研究機関とも既に合同で健康調査を始めており、石原教授は「中国などの発展が続けば、越境汚染のリスクはますます高まる。今後も因果関係を追究していきたい」と話している。(鎌倉尊信)