2013年4月4日木曜日

がん検診車、運用ピンチ…山口

がんの早期発見などを目的とした検診車でのX線撮影への対応について、山口県内の自治体が頭を抱えている。
 検診車では、ほとんど放射線技師が撮影しているが、医師が立ち会わない場合について、国が「違法」と判断したためだ。これを受けて下関市は1日から胸部検診車の運用を中止。医師不足に悩む他の自治体も情報収集に追われている。
 違法の疑いは、昨年春に浮上した。検診車で巡回サービスを行っていた下関市に対し、市民が「(医師がいないのは)法律違反ではないか」と指摘。市が県を通じて国に問い合わせたところ、今年2月に厚生労働省から「現場に医師がいないのは違法」との回答があった。
 診療放射線技師法は「技師は医師または歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に照射してはならない」と定めており、厚労省の見解はこれに則したものだ。
 一方、検診車については、1978年の衆院予算委員会で当時の厚生大臣が「(医師が)包括的な指導、あるいは監督(する)ということもある。集団検診などの実施に配慮していい」と答弁し、医師がいない運用の支えになっていた。
  下関市はX線撮影機を備えた肺がんと胃がんの検診車を各1台所有。毎年度、支所や公民館などで約160回の検診を行ってきた。2011年度も約7000人 が利用したが、今回の「違法」判断を受け、肺がん検診車の運用を中止。運用委託している胃がんの検診車も委託先と対応を協議している。
 市は「医師である保健所長の指導を受けて実施していた。大臣答弁から法令上、問題はないと考えていた」とする。
  県によると、下関市以外の市町も県予防保健協会などに運用委託する形で巡回サービスを行っており、影響が広がっている。6月に集団検診を予定している周南 市は「国や県の指示を待って協議したい」と対応を保留。岩国市も「国や県から指示がなく情報収集している段階」と困惑する。
 防府市は「全 ての検診車に医師は同乗できない」などとして、検診車の運用について、県に指示を求めているという。医師を何とか確保して5日から検診を実施するという防 府市は「指示がない状況が続けば、今後は中止も視野に入れなければならない」。山口市は「委託先と調整し、(医師配備のために)検診車の台数を減らすこと も検討する」としている。
 下関市は「国や県には、市民サービスが低下しないように現実的な対応を考えてもらいたい」と求めている。(古藤篤)
(2013年4月4日 読売新聞)