ピロリ除菌、効果限定の説明が不可欠－消化器がん検診学会が声明発表

医療介護ＣＢニュース 4月9日(火)16時47分配信

　慢性胃炎への保険適用が拡大され、今後、普及・拡大していくとみられるピロリ除菌。報道では、胃がん発生予防のメリットばかりが先行しがちだが、胃がん発生の可能性がなくなるわけでも、検診の必要がなくなるわけでもない。日本消化器がん検診学会は9日までに、ピロリ除菌の胃がん発生予防効果は限定的であり、患者への効果限界に関する事前の十分な説明と適正な事後指導が不可欠だとの理事会声明を発表した。

　胃がんを引き起こすとされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)。そのピロリ菌を抗生物質などで取り除く治療である「除菌」は、胃がん発生予防に効果があるとして注目されている。

　同学会は、国内外でこれまで行われたピロリ除菌の有効性に関する比較試験で、除菌者の胃がん発生リスクは非除菌者に比べて減少したと報告されているが、除菌者の胃がん発生がゼロになったとの報告も、発生リスクが検診不要あるいは無視できるレベルにまで低下したという信頼できる報告もないことから、「効果は限定的」とした。このため、除菌治療が成功しても、胃がん発生が一定の頻度で起こると考えられ、継続的なスクリーニング検査の実施が必要だと訴えた。

　また、スクリーニング検査は、治療した医師が定期的に内視鏡検査を実施することが望ましいが、現時点では、検査の処理能力や患者のアドヒアランス(患者自身の治療への積極的な参加)などの点で継続性に問題があるとし、現在の対策型検診として実施されているX線検査による胃がん検診の重要性に変わりはないとした。

　さらに、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜委縮の程度を測定し、被験者が胃がんになりやすい状態かどうかをA-Dの4群に分類するABC検診を、X線検査の代わりに導入する動きが一部であることに触れ、同検診の実施方法が未確立であることや、死亡率減少効果など、有効性のエビデンスが得られていないことから、除菌治療を組み込んだ同検診を計画的なランダム化比較試験による適正な評価を経ることなく拡大していくことは、看過できないとの考えを示した。

　同学会では、「胃がんリスク評価に関する研究会」(代表世話人=吉原正治・広島大保健管理センター長)を設置し、除菌治療の普及・拡大の影響を勘案して、胃がん検診の在り方について検討を進めている。【坂本朝子】