2013年4月4日木曜日

「甲状腺異常」全国に広がっている

「青森、山梨、長崎の子どもは福島と同じ」という環境省データの衝撃

<ベラルーシがん発生率は5年後50倍>

 放射能汚染が全国に広がっている――。

 先月末、環境省が福島県外3県(青森・弘前市、山梨・甲府市、長崎・長崎市)で行った甲状腺の超音波検査の結果を発表した。12年11月~今年3月に実 施されたもので、3~18歳の計4365人を対象にしている。その結果、5ミリ以下の「しこり」や、20ミリ以下の「のう胞(液体がたまった袋)」が出た 子どもの割合は、弘前市57.6%、甲府市69.4%、長崎市42.5%となった。

 一方、福島県で同様のしこりやのう胞が見つかったのが、11年は35.3%、12年が43.6%。そのため環境省は、福島県と他県は「ほぼ同様か、大差なし」として「原発事故の影響によるものとは考えにくい」と結論付けた。

 冗談ではない。福島県内では11年度に検査した約3万8000人の中で、すでに3人ががん、7人にがんの疑いが出ている。一般的に小児甲状腺がんは、 100万人あたり1~3人といわれているのだからとんでもない数値だ。その福島と他県の数値が変わらないということは、むしろ全国が汚染されているという ことになる。
「隠された被曝」の著者で、内部被曝(ひばく)の危険性を研究する琉球大の矢ケ崎克馬名誉教授はこう言う。

「人間ドック学会誌の成人データと、福島県の子どもの検診データを見てみると、『福島の子どもは成人に比べて何か他の要因がある』と判断せざるを得ませ ん。福島の18歳くらいの子どもの直径3ミリ以上ののう胞保有率は、20歳の数値の3倍以上なのです。青森や長崎の子どもたちが福島と同程度ののう胞保有 率を示したということは、青森や長崎も異常なのです。放射性ヨウ素が届いていて、子どもの甲状腺を刺激している可能性があり、いきなり放射能との関係を否 定することは非科学的と言わざるを得ません。医学の見方では、のう胞は直接的にはがんには結びつかないようですが、今回の調査結果は、日本中に対する危険 信号ではないでしょうか」

 本州の北端や九州でこれなのだ。東京の子どもたちも安心できない。

 事故後に都内の自宅周辺(豊島区駒込)を計測調査したという元立教大学理学部教授の佐々木研一氏(放射能に関わる無機・放射化学)が言う。

「放射能は東京にも降り注いでいます。事故から数日後に計測すると、0.8マイクロシーベルトでした。その翌日から4日間は約0.1マイクロシーベルトず つ減った。半減期が8日の放射性ヨウ素がかなり含まれていたとみています。短期間とはいえ、首都圏でも高い値が出ていた。荒川区や足立区ではホットスポッ トが見つかっています。チェルノブイリでは、5年以上経ってから異常が出る人も多かった。全国的に検査していくべきです」

 前出の矢ケ崎氏によれば、チェルノブイリの北方に位置するベラルーシでは、事故の翌87年からがんの発生率が増加。5年後には50倍程度に増えたとい う。郡山より汚染が低いウクライナのルギヌイ地区では9年後には10人に1人の子どもが甲状腺の病気になり、100人に1人ががんになっている。放射線量 が低い地域でも健康被害が出ているのだ。対策は福島だけでは済まない。
(写真=放射線量が高く登校する子どもの姿が消えた福島・飯舘村の小学校)