2013年4月6日土曜日

多摩川のシジミ復活、水質浄化で干潟再生、共同漁業権取得し適正管理へ/川崎

多摩川河口でここ数年、長らく姿を消していたシジミが“豊漁”だ。水質の浄化で、干潟が再生したためとみられる。隣の東京都ではすでにシジミ漁を営む漁師もいるが、漁に関する取り決めがないため、乱獲を懸念する声も聞かれる。両都県の漁協はこの秋にも共同漁業権を取得し、漁場の適正管理へ乗り出す。

 右岸に望むのは国際戦略拠点のキングスカイフロント、左岸には羽田空港。干潮時にのみ出現する船でしか渡れない中州で、川崎河川漁協理事の安住三郎さんが「ほら、結構取れるだろう」と笑顔を見せた。

 漁に使うのは、「まき」と呼ばれるかごの付いた大型の熊手状の専用器具。砂を掘り起こす作業を繰り返すことわずか数分、シジミは両手に山盛りになった。

 安住さんによると、シジミが目立つようになったのは6年ほど前から。かつては当たり前のように生息していたシジミも、汚染が深刻化した昭和40年代以降、姿を消していた。これまで稚貝放流などは行っておらず、下水処理が進んだ結果、自然増加したという。

 「川崎側は採って売ることまでしていなかった」と安住さん。一方、大田区側の漁協では、数年前からシジミ漁を営み始めた。都水産課によると、水揚げ量は都漁連の流通センター出荷分だけで、2010年度は122トン(2400万円)、11年度は80トン(1700万円)に上る。

 河口一帯は知る人ぞ知る穴場となり、一般市民も潮干狩りに来訪。漁業権の設定がないため一帯は自由漁業のエリアで、隣県の漁船が“遠征”してくる事例も目撃されているという。

 両都県の漁業者は、乱獲による資源の枯渇を危惧。ことしが10年に1度の漁業権の切り替え時期に当たることから、シジミを加える方向で昨夏から関係者間の協議を始めた。すでに両都県の漁場管理委員会から異議なしの答申を得ており、9月1日から漁業権は設定される見込みだ。

 今回の漁業権の意義について、安住さんは「誰の畑でもないと、採った者勝ちの状態になってしまう。権利を与えてもらった方が、自分の漁場をしっかり管理していこうという意識が漁業者にも働く」と説明。禁漁期を設けるなど、一定のルール作りも今後は不可欠と指摘する。

 ただ、シジミを漁業者のみで独占するつもりは毛頭なく、9月以降も市民が自家消費分を手掘りで採ることまでは制限しないという。安住さんは語る。「うまく資源管理しながら、誰もがシジミを楽しめる多摩川にしていきたい」

カナコロニュース